医学生への奨学金給付を行う公益財団法人川野小児医学奨学財団が「医学生の志望理由・学生生活・進路に関する意識調査」を2023年3月に実施。その結果が2023年5月18日 発表された。
公益財団法人
川野小児医学奨学財団
公益財団法人川野小児医学奨学財団は、小児医学・医療・保健の発展のため、小児医学研究者への研究助成や小児医学を志す医学生への奨学金給付を行う団体。
- 設立年月日
1989年12月25日 - 所在地
〒350-1124 埼玉県川越市新宿町1-10-1 - 理事長
川野幸夫/株式会社ヤオコー代表取締役会長 - 事務局長
川野 紘子 - 事業内容
研究助成/奨学金給付/小児医学川野賞/医学会助成/小児医療施設支援/ドクターによる出前セミナー - Website
https://kawanozaidan.or.jp/
医学生の意識調査
概要
- 調査名
「医学生の志望理由・学生生活・進路に関する意識調査」 - 対象者
全国の大学医学部医学科に通う医学生 - 調査方法
インターネット調査 - 調査期間
2023年3月1日~3月2日 - 回答数
166名(男性47名、女性119名)
本調査は、全国の医学部医学科で学ぶ学生を対象に、医学部への入学理由や学生生活、進路などに関する質問を行い、医学生の意識や学生生活の実態について調査・分析することを目的としている。
集計結果の
ポイント
●医学部に入りたいと思った時期は1位が「高校生のとき」で47.6%と約半数、2位が「小学生のとき」で33.1%。志望理由では、「医師になって世の中の役に立ちたいと思ったから」が48.2%と最多。(Q2、Q3)
●医学部に入る前と後のギャップについて、「あった」と回答した医学生は62.0%と半数以上。ギャップの内容は1位が「授業や試験が多い」で50.5%と約半数、2位は「医学部以外の学生との交流が少ない」(42.7%)。(Q4、Q5)
●大学生活で心配や悩みについて、「ある」と回答した医学生は52.4%と半数以上。具体的には「どの診療科を目指すのがいいか決められない」(44.8%)が最も多く、2位は「授業が難しい」(43.7%)。「本当に医師を目指すべきか悩むときがある」も4位(24.1%)となった。(Q8、Q9)
●医師に必要だと思う能力やスキルについて、1位「医学の知識と技術」が6割超(63.3%)、2位「コミュニケーション能力」が約半数(48.8%)、3位「体力」は30.1%となった。(Q13)
●興味のある診療科は、1位「内科」(43.4%)、2位「外科」(25.3%)、3位「小児科」(22.9%)。男女別では、1位は男女ともに「内科」だが、2位は男性「外科」(29.8%)、女性「小児科」(25.2%)と違いがみられた。(Q14)
●小児科に興味があると答えた医学生に理由を聞いたところ、1位「子どもが好きだから」が65.8%と7割近い結果となり、2位「自分や家族が病気になったとき、小児科の先生にお世話になったから」(26.3%)、3位は「映画やドラマ、本などを通じて興味をもったから」と「小児科医が不足しているから」でともに23.7%となった。(Q15)
アンケート集計結果
※本調査の結果は「(公財)川野小児医学奨学財団調べ」によるものです。
Q1. 現在、奨学金制度を利用していますか。
[単一回答]
現在、「奨学金を利用(貸与型/給付型/貸与型と給付型を併用)」している医学生は37.3%。そのうち、「貸与型の奨学金を利用」(19.3%)が最も多かった。
Q2.医学部に入りたいと思ったのはいつごろからですか。
[単一回答]
「高校生のとき」が約半数(47.6%)と最も多く、次いで「小学生のとき」が約3人に1人(33.1%)の割合となり、2割弱(17.5%)の「中学生のとき」と大きく差がついた。
Q3.なぜ医学部に入りたいと思ったのですか。
[複数回答]
「医師になって世の中の役に立ちたいと思ったから」(48.2%)、「医師になって患者さんの病気を治したいと思ったから」(44.0%)の回答が多く、次いで「医師になれば高い収入が得られると思ったから」(34.9%)という結果となった。
Q4.医学部に入る前と後で、ギャップはありましたか。 [単一回答]
医学部に入る前と後でギャップが「あった」と回答した医学生が62.0%と、6割以上がイメージとの違いがあったと感じていることがわかった。
Q5.どのようなギャップでしたか。
[複数回答]
(Q4で「あった」と回答した方への質問)
ギャップの中身については、1位「授業や試験が多い」(50.5%)、3位「授業や試験が難しい」(41.7%)となり、思ったより勉強面の負担が大きいと感じていることがうかがえる結果となった。また、2位は「医学部以外の学生との交流が少ない」(42.7%)となった。
Q6.勉強は、大学生活の中で、
何割(%)を占めていますか。
[単一回答]
大学生活の中で勉強が占める割合は、60%(20.5%)が最も多く、次いで50%(16.3%)という結果となった。
Q7.大学生活の中で、勉強以外で
最も時間を使っていることは何ですか。
[単一回答]
勉強以外で最も時間を使っていることは、「アルバイト」(36.1%)が一番多く、次に「部活・サークル活動」(24.7%)、「友人(恋人)との付き合い」(19.3%)という結果となった。
Q8.大学生活で心配ごと、
悩みごとはありますか。
[単一回答]
大学生活で心配ごと、悩みごとが「ある」(52.4%)が「ない」(47.6%)を4.8pt上回り、半数以上の医学生が悩みを持っていることがわかった。
Q9.どのような心配ごとや悩みがありますか。
[複数回答]
((Q8で「ある」と回答した方への質問)
大学生活での心配ごとや悩みごとの内容を質問したところ「どの診療科を目指すのがいいか決められない」(44.8%)、「授業が難しい」(43.7%)がともに多い結果となった。また、「本当に医師を目指すべきか悩むときがある」という悩みも24.1%と約4人に1人の割合となった。
Q10.コロナ禍で、
心配ごとや悩みごとは増えましたか。
[単一回答]
「増えていない」(64.5%)が多く、「増えた」は全体の3分の1程度(35.5%)という結果となった。
Q11.どのような心配ごとや悩みが増えましたか。
[複数回答]
(Q10で「増えた」と回答した方への質問)
心配ごとや悩みごとの内容は「人間関係の悩み」(49.2%)が約半数と最も多く、次いで「学習上の悩み」(45.8%)、「経済的な悩み」(32.2%)という結果となった。
Q12.10年後、どのようになっていたいと
考えていますか。 [単一回答]
「臨床医」が約6割(57.2%)と最も多かった。一方で、「10年後のことは、まだわからない」という回答も14.5%あった。
Q13.医師に必要だと思うことは何ですか。
(3つまで選択) [複数回答]
「医学の知識と技術」(63.3%)が最も多く、次いで「コミュニケーション能力」が48.8%と約半数の回答があった。また、3位「体力」(30.1%)、4位「メンタルの強さ」(22.9%)となり、医師には心身の強さも必要だと考えられていることがわかった。
Q14.現在、興味のある診療科は何ですか。
[複数回答]
現在興味のある診療科は「内科」(43.4%)が最も多く、次いで「外科」(25.3%)、「小児科」(22.9%)という結果となった。
男女別にみると男性は1位「内科」(44.7%)、2位「外科」(29.8%)、3位「整形外科」(27.7%)となり、女性は1位「内科」(42.9%)、2位「小児科」(25.2%)、3位「外科」(23.5%)と違いがみられた。
Q15.なぜ小児科に興味があるのですか。
[複数回答]
(Q14で「小児科」を選択した方への質問)
小児科に興味をもった理由は、「子どもが好きだから」が最も多く、7割近く(65.8%)の回答があった。次いで「自分や家族が病気になったとき、小児科の先生にお世話になったから」(26.3%)という結果となり、自らの体験から小児科医に興味を持ったという回答も多かった。
さらに、「映画やドラマ、本などを通じて興味をもったから」「小児科医が不足しているから」(23.7%)と続き、メディアや社会課題の影響もみられた。
Q16.日本の小児医療の課題は
何だと思いますか。
「小児科医が少ない」など小児科医不足、「少子化によって、患者数が減少しているため将来性がない分野であるというイメージが強い」などの少子化による影響を指摘する意見が目立った。また、「指定難病と呼ばれるものの多くは先天的なもので小児に多い」など疾患の特徴・治療に関することもあげられた。
<医師・小児科医不足>
- 小児外科医の少なさ 小児科医の少なさ 小児科をもつ病院の少なさ NICUをもっと充実させていくべき(4年生 大阪府)
- 人手不足。医療器具が足りていない、(1年生 岐阜県)
- 医師不足 訴訟が多い(2年生 東京都)
- 人口の多い都市部の子どもにたいして医師数が少ないこと(5年生 埼玉県)
<少子化の影響>
- 少子化への不安や、小児の症状の変化が多いこと、訴えられることが多いことなどから、小児科医になる医師が不足してきていること。(4年生 福岡県)
- 少子化によって、患者数が減少しているため将来性がない分野であるというイメージが強いこと(3年生 大阪府)
- 少子化 出生前診断 遺伝病(4年生 北海道)
<新たな治療法への対応など>
- 難病治療(2年生 広島県)
- 治療法の確立していない病気が見つかった場合、未来ある子どもに未来をあげられるような医療が提供しきれていないこと(4年生 東京都)
- 指定難病と呼ばれるものの多くは先天的なもので小児に多い。それらの治療法をできる限り多く見つけていくこと。(5年生 大阪府)
- 医療的ケア児への支援 知的・発達障害児への理解と家族の支援(4年生 青森県)
- 小児は子どもの総合診療科と呼ばれることもあるが、現在は身体的な病気は全て診れるが、精神的な病気に対応できる人は少ないように感じる(3年生 青森県)
- 小児の臓器移植に関する問題、メンタルヘルス面に関する問題(3年生 福井県)
<その他>
- 注目されていない(1年生 奈良県)
- 親との関わり(3年生 三重県)
- 親とのやりとりが小児科医の大きな負担となっていること。(4年生 鳥取県)
- 若い医学生に小児医療に携わりたいと思わせる要素が少ない。(4年生 鹿児島県)
- 高齢者と同じくらいの介護保険が必要(5年生 東京都)
- 虐待など(4年生 福島県)
- ドナー少ない。地域格差が大きい。(4年生 宮城県)
Q17.小児科に興味が無い
小児科医になりたくない理由は何ですか。
[複数回答]
(Q14で「小児科」を選択していない方への質問)
小児科に興味がない・なりたくない理由は「子どもや親とのコミュニケーションが大変そうだから」(35.9%)が最も多かった。