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サレジオ高専 インタビュー / コロナ禍で始まったオンライン学習からハイブリッド授業実現に向けて

2020年 世界中を襲った新型コロナウイルスの感染拡大は、様々な学校及び教育機関にも大きな影響を与えました。子供たちの学びを止めない為、それまで想定されていなかったオンラインでの授業を多くの教師たちが試行錯誤をしながら実施をしました。

今回 学校ステーションでは、「モノづくり」をする「人づくり」を目指しているサレジオ高専の先生方に、教師の視点からオンライン授業を実際に行ってみての感想、そしてワクチン接種が進む現在 With / After コロナを見据えて、オンラインも含めたこれからの授業のあり方について、お話を伺いました。

サレジオ高専
学校概要

  • 校長:小島 知博先生
  • 創立:1934年
  • 宗教:カトリック
  • 生徒数:852名
    (男子:695名、女子:154名)
  • 教職員:152名
  • 制服:あり
  • 給食:食堂あり(弁当)
  • スクールバス:なし 
  • 敷地面積:24,939.63㎡ 
  • 校庭:人工芝 
  • 図書館の蔵書約:60,000冊 
  • 土曜日:あり

志願者数、倍率、学費

2020年度の志願者数は342名(男子285名、女子57名)、募集は180名、合格者は194名(男子157名、女子37名)。
志願倍率は1.76倍。
初年度の学費は約1,320,000円

高専とは

高専は16歳から5年間の一貫教育

高等専門学校は昭和37年4月に制度化された高等教育機関で、現在全国で国公私立あわせて57校が設置されている。

中学校卒業者を対象とした5年制の学校で、16歳からの一貫教育を実践し、一般科目と専門科目を効率的に学びながら、理論と実践を兼ね備えた技術者を育成している。卒業後は準学士の称号が授与される。

さらに、プラス2年の専攻科※を加えると高校プラス大学同等の「7年間の一貫教育」となる。

※専攻科は大学3・4年に相当する課程。この課程を修了し、規程の試験に合格すれば、大学卒と同等の学位が授与され、大学院への進学、専攻科枠や大学卒枠での就職が可能となる。

オンライン授業について
事前アンケート

インタビューを行うにあたり、事前に以下書面アンケートに回答して頂いたので、まずはコチラからご紹介します。

学習方法

質問1:オンライン授業を実施された科目を教えてください。

回答:講義演習科目は原則オンライン授業(オンデマンド)で実施しました。実験実習科目で本校施設・設備を使用するものは対面授業としましたが、事前学習や事後学習・発表等の一部はオンラインで実施しました.

質問2:オンライン授業はどの様な端末で受けられる様にしましたか?

回答:スマートフォン、タブレット、PC いずれの端末でも授業を受けられる様にしました。

質問3:オンライン授業用の端末は学校から支給されたものですか?

回答:支給はしていませんが、学校のPC演習室は開放していました。

質問4:オンライン授業を受けた人数は何人くらいですか?

回答:自宅等にオンライン授業に使える機材がなく、学校のPC演習室を利用したのは5名未満です.したがって900名弱の学生がオンライン授業に対応できていたと思われます.

質問5:オンライン授業はどのプラットフォームを使用して行われましたか?

回答:本校でライセンス契約を結んでいるのはZoomとGoole Meet(G Suite for Education)ですが,特に使用プラットフォームは限定しませんでしたので、Microsoft Teamsを使用される教員の方もいました

質問6:オンラインと、オフラインでの授業を同時進行で実施等はされましたか?

回答:いいえ、ハイフレックス型(同じ授業を対面授業とオンライン授業の双方で受講できる方法)のオンライン授業は今後の課題です。

質問7:後で動画で授業を見ることは可能でしたか?(Youtube、動画アーカイブ等)

回答:はい、一部の授業で授業動画を提供しました.

質問8:オンラインで生徒からの質問は可能でしたか?

回答:はい、原則として科目が時間割に配当された時間内で、Zoom等の遠隔会議システムを使った質疑応答を設けました.

質問9:オンライン授業になってから時間割は変わりましたか?

回答:原則変更なしですが、遠隔授業から対面授業へ切り替える際に、部分的に対面授業へ移行した際の臨時の時間割は編成しました。

質問10:オンライン授業において、特に気をつけられたところはどういった所でしょうか?

回答:各生徒のネット環境はもちろん、生徒のモチベーションの維持にも気を使いました。

生徒とのコミュニケーションについて

質問:オンライン授業で難しいのは生徒とのコミュニケーションと言われています。個人面談やホームルーム等はオンライン授業実施の際に、どの様におこなわれたのでしょうか?

回答:全学生への電話家庭訪問をまず実施しました.またあわせて学級担任による学生・保護者との面談もオンラインで実施。低学年においては、授業以外にホームルームもオンラインで実施しました.

これからの取り組みについて

質問1:オンライン授業を増やす予定はありますか

回答:実験実習科目の多くが本校施設・設備の利用を前提としており、対面授業(オフライン授業)が回避できない状況です.遠隔授業(オンライン授業)に対応できるものについては感染拡大の状況に関わらず、日常的に授業後に授業動画を閲覧できるように準備をしたいと考えています(したがって、授業数として大きく変わる状況にありません)

また授業以外でも、オンライン実施でメリットの大きい学校行事は、オンライン参加が可能なように準備を進めたいと考えています.

質問2:オンライン以外のコロナ禍の対策を教えてください。

回答:基本的な感染症対策(体調確認、体調不良時の登校自粛、共同施設利用前後での手洗い・手指消毒、換気、昼食指導など)を徹底しています。特に、間近での会話、発声を伴う授業では、密にならないよう工夫して授業を運営します。

対面授業(オフライン授業)を前提とした実験実習科目により技術・技能を修得する教育課程となっていますで、これらの実験実習科目の対面授業をいかに止めないかが課題となっています。

他方、低学年のホームルームでは対面(オフライン)でのクラス・レクリエーションを通じ、学生の交流を担保したいと考えています.

オンライン授業について
インタビュー

学校ステーションでは、事前アンケートで頂いた回答を踏まえ、サレジオ高専教員の以下方々に具体的なお話を伺う為、オンラインにて約1時間のインタビューを行いました。

サレジオ高専では、新型コロナウイルス感染拡大により政府から要請があった2020年3月からの一斉休校に対応。そして2020年5月11日からオンラインにて前期授業をスタート。2020年6月22日以降は対面での実験実習科目の授業を実施し、翌週から全ての授業が対面形式で行われる様になったとの事。

今回、2020年6月までの事も振り返りつつ、教員の方々にお話を伺う事によりアンケートだけでは見えてこなかった、様々な気づきが得られたインタビューとなりました。

■ご参加頂いた教員の方々

  • 教務主事(情報工学科)
    内田 健様
  • デザイン学科長
    比留間 真様
  • 電気工学科長
    加藤 雅彦様
  • 機械電子工学科長
    冨田 雅史様
  • 情報工学科長
    島川 陽一様
  • 一般教育科長(文系)
    石田 毅様
  • 一般教育科長(理系)
    佐藤 豊様

実際にオンライン授業を行ってみて...

サレジオ高専は、中学校卒業者を対象とした5年制の学校で、16歳からの一貫教育を実践し、一般科目と専門科目を効率的に学びながら、理論と実践を兼ね備えた技術者を育成しています。

独自のユニークな科目と併せて、バランスよく一般と専門の科目を学ぶスタイルを採用。本科に設置されている専門学科では入学時に選択した「デザイン・電気工学・機械電子工学・情報工学」のいずれかを、5年間を通して、基礎からしっかり学ぶことが出来ます。

しかし、これら専門学科では実習を重視しており、そこが特にオンラインでの授業では難しかったとの事。各科での具体的な問題点については以下の様な声が上がりました。


  • デザイン・比留間先生
    課題の説明において、今までは感覚的に伝わっていた事が伝わりづらくなった。
  • 電気工学・加藤先生
    実験・実習が多い為、動画に撮って生徒と共有し対応したが、実際にやる事で得られる経験や知識と、動画で見るだけや、思考実験(机上での想定実験)ではやはり大きく異なる。
  • 機械電子工学・冨田先生
    オンライン授業では、どうしても受け身の授業となるので、生徒自身の理解度・モチベーションのキープが難しかった。
  • 情報工学・島川先生
    プログラミングにおける新しい概念を伝える事や、生徒自身の理解度・モチベーションのキープが難しかった。生徒のリアクションも掴みにくく、その後に確認すると理解度が低かったと言う問題点もあった。(その場での解決が出来ない。その場で質問・回答が出来ない)

因みにサレジオ高専のオンライン授業は、生徒のネット環境や通信料/通信制限等を考慮し同時双方向型配信ではなく、オンデマンドでの実施を行ったとの事。

同時双方向型配信授業
教師がインターネットを通じて、パソコンやタブレットからリアルタイムに授業を配信。学生はその配信された授業を視聴する形式のオンライン授業。

対面式の授業同様にリアルタイムで質疑応答を行える他、コミュニケーションをはかりながら授業を進められるが、映像や音声をリアルタイムでやり取りするため、大量のデータを送受信することになり、データ量に耐えられるインターネット環境とパソコンやタブレット、スマホの処理能力が必要となる。

特にタブレットやスマホでは処理を仕切れず、途中で通信が切れてしまったり、通信料の高額化や通信制限に引っかかってしまう場合もある。

オンデマンド授業
教師がインターネット上に資料や写真、音声、動画などの教材を設置し、課題などを配布して、教材を見ながら学ぶスタイルの授業。リアルタイムで双方向にコミュニケーションを取りながらの授業は出来ないが、受講後にチャット画面等にてやり取りをする事は可能。

生徒側のデバイスの問題や、通信環境の準備が充分で無い事から、オンデマンドでの授業を実施する事となったサレジオ高専ですが、アンケート回答にあった様に、Zoom等の遠隔会議システムを使った質疑応答の時間も設けたとの事。

しかしながら、多くの生徒から双方向であってもオンラインでの質問は苦手であると感じていたようです。

また緊急の事態であった為、スマートフォン、タブレット、PC いずれの端末でも授業を受けられる様にした結果、「生徒の使用デバイス(端末)がそれぞれ異なるので、見え方、反応、対応が異なる:一般教育科長(文系)石田先生」といった弊害もあった様です。

生徒が使用していたデバイス(端末)は、概算でパソコンが50%、スマートフォンやタブレットが50%と言う内訳だったとの事。しかしながらパソコンを使用した生徒の中には、自分専用のパソコンでは無い、またはパソコンに不慣れな為、キーボードの使い方がわからないと言った問題もあったと、教務主事(情報工学科)の内田先生は話されていました。

コミュニケーションの難しさ

さらにオンラインにおける「コミュニケーション」の在り方による弊害もあった様です。

多くの先生方がクチにされた「モチベーション」の維持はもちろんの事、言語のみによる説明が多くなる為、生徒が授業や問題の内容を簡単に理解出来ない事もあったとの事。

それらの問題は、今までであれば生徒の表情や仕草などから読み取ったり、1対1のコミュニケーションでフォロー出来ていたりしたが、オンラインとなった事で把握しずらくなってしまったとも話されていました。

特に低学年の生徒の場合、オンデマンドの授業であるが故に、授業内容や問題の把握のプロセスが見えない為、どこが理解できなかったか、どこが不明かを言語化できず、質問する事すら出来ない生徒もいたとの事(一般教育科長(文系)石田先生談)。

一般教育科長(理系)佐藤先生も、オンライン授業で出した課題はキチンとクリアできていたが、対面授業になって小テスト等を実施してみると出来ないことなどもあり、課題が出来ている=理解していると言う事ではないと言う事を痛感されたと話されていました。

教務主事(情報工学科)の内田先生は

緊急の対応の為、生徒たちのデバイスや通信環境を考慮しオンデマンド授業を実施しましたが、その結果、生徒の内 1/3程度の能動的に学ぶことが得意な生徒=インプットが得意な生徒は適応出来ましたが、残り 2/3程度の受動的な学びに慣れてしまっている生徒=インプットが苦手な生徒は授業内容を理解する事が困難だった様です。

通常の対面授業であれば『作業→確認、作業→確認』と双方向なコミュニケーションを取る事で、生徒の理解度や状況をお互いに把握しながら進める事が出来ますが、オンデマンド中心の授業では、質問出来る環境は用意しましたが、そもそも何を質問して良いのかわからない、質問そのものを言語化出来ないと言った事を含め、双方向なコミュニケーションをとりながら進める授業の実施は困難でした。

と感想を述べられました。

今後のオンライン授業の
在り方について

2020年初頭から日本でも感染が拡大した新型コロナウイルス。政府から要請による一斉休校を経て、オンラインによる授業はもちろん、教育現場のデジタル化が現在 推し進められています。

実習の多いサレジオ高専では、2020年4月~6月に実施したオンデマンド授業での状況も踏まえ、今後どのようなオンライン授業の在り方を考えられているのか、教務主事(情報工学科)の内田先生に伺いました。

2020年4月~6月、新型コロナウイルス感染拡大によりサレジオ高専においてはオンデマンドの授業を実施しました。

これについては、デバイスの使用方法やコミュニケーションの在り方など、生徒も教員も困難な事が多かったのですが、それでも生徒たちは環境に適応し、後半は何とかやってくれていた様に思います。その点は、生徒たちに本当に感謝しています。

さらに、今回オンデマンドの授業を実施した事により、生徒と教員が双方向のコミュニケーションをとりながら、授業を進める事の大切さも痛感しました。

お陰様で本校では、教員も生徒も感染予防を徹底して実施してくれており、休校する事態も2回程度で済んだことから、2021年度に関しては出来るだけ対面の授業を多く実施していきたいと考えています。

その上で、オンラインの方が適している授業やコンテンツもあるかと思います。

授業が録画されている事により、後で見直しも出来るのでオンデマンドの方が良いと言う生徒も居ますから、例えば対面での授業をメインとしつつ、それらを録画して生徒に提供する事が出来ないかとも模索しています。

また、オンデマンドではなく同時双方向型配信によるオンライン授業と言うのも、将来的には実施していければとも思っています。

困難な状況下で急遽スタートしたオンライン授業ではありますが、その経験を有意義なものとし、今後の新たなる授業の在り方、オンライン授業の可能性の追求、対面とオンラインの良い点を組み合わせたハイブリッドな授業の実現に向けて、サレジオ高専は更なる模索を続けていくと、内田先生は話されていました。

2021年も、残念ながら引き続き新型コロナウイルス感染拡大状況は収まっておらず、7月12日からは東京都に対して4度目の緊急事態宣言が発令されました。

収束または終息時期が見えない中、学生たちの学びを止めず、より良いモノにしていこうと言う教員の方々の姿勢は、暗いニュースが多い現在において一つの救いであり、With / After コロナ時代の教育の在り方の指針にもなると思いました。

最後になりましたが、お忙しい中、本取材にご協力頂きましたサレジオ高専の教員の皆様に心より感謝致します。ありがとうございました。

説明会の情報は下記リンクまたはサレジオ高専の公式ホームページをご確認ください。

  • この記事を書いた人

Team Little-Big

フリーランスPRエージェント、ライター、翻訳や通訳業務等。 インタビュー記事 https://ledgeweb.com/740/

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